6月議会報告④

8月になり、議会だより、議会報告も発行されましたが、遅ればせながら、6月議会での一般質問の報告です。生活困窮者への支援について様々な角度から質問し、二つの提案をしました。今まさに、猛暑の中、経済的な理由からエアコンの設置や利用ができない家庭が市内でも少なくありません。生活困窮は様々に地域を襲っています。

 6月議会での提案は、命の水が止まっては大変と、ほとんどの人が滞納せず納付している水道料金や下水道料金について、所得に応じた減免がないので、これを、水道料金の福祉減免(低所得者や障がい者が対象で基本料金を免除など)を実施しているつくば市などを参考に導入の検討を提案しました。答弁は検討する予定はないという冷たいものでした。水道事業は米子市の管轄ですので米子市へも要望する必要がありますし、下水道事業は境港市独自で対応できることなので全市域へ下水道が普及するまでに実現するよう引き続き要望していきたいと思います。

 もう一つの提案は生活保護を受けられる人が受けられていない現状を打開するための方策の一つとして、「生活保護のしおり」の改善を求めました。「生活保護なめんなジャンパー」事件を契機に、神奈川県小田原市の福祉行政は市民や元生活保護利用者や専門家が入って改善策を検討しています。まっさきに改善が必要とされたのが、この「生活保護のしおり」でした。境港市のものと対比するとよくわかりますが、相談がしやすい、申請がしやすい表現になっていることが大きな違いだと思います。福祉の窓口ですので、相談や申請がしやすい環境づくりのため、しおりの改善が急がれます。

小田原市生活保護のしおり.pdf
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今回も質問の逐語を紹介します(文責:安田)

生活困窮者への支援について

【安田】①昨年12月政府が発表し、今年10月から強行しようとしている、生活保護基準の引き下げは、総額160億円、1世帯当たり最大5%、保護利用者の67%が引き下げとなる大規模なものであり、その根拠は、一般低所得世帯、すなわち年収の低いほうから10%の層、いわゆる第1・十分位の消費支出額が下がったので、それに合わせて生活扶助基準を下げるというものです。この削減計画について、先ごろ、国連人権高等弁務官事務所の人権専門家から日本政府に対して「最低限の社会保障を脅かすもの」「ますます多くの人々を貧困に陥れることになる」と警告し、負の影響を緩和するために必要な対策を講じるように要請がなされました。世界の人権保障の番人ともいえる国連の専門家から厳しい注文を受けた以上、日本政府は見直しの検討を始めるべきだと思いますが、政府は、「一方的な情報に基づく発表であり、大変遺憾、国連人権高等弁務官事務所に対して抗議を行った」といいます。生活保護制度は極めて市民生活に密着した制度であり、地方自治体が担う重要な制度です。この、生活保護基準引き下げについての国連からの警告と見直し要請、日本政府の対応について、市長のお考えをお聞かせください

②一般低所得世帯、第1・十分位の実質所得の上限値は1999年には162万円だったのが、2014年には134万円へと下がり続けており、一般低所得者世帯の生活水準が困窮状態に置かれているのが現状です。生活水準が悪化しているということです。そこで、本市の低所得世帯の実態をどう把握し、生活困窮に対してどのような政策に取り組んでいるか、お答えください。

③多くの事業が経済状況に応じた減免や税額の決定をしている中、例えば水道料金や下水道料金は経済状況等を理由にした減免措置もありませんので、こうした事業での減免措置も検討されてはどうかと思いますが、いかがでしょうか。

④経済的な支援をもっと受けやすくという観点で質問します。神奈川県小田原市では、「生活保護なめんなジャンパーの着用事件」の反省を力に、改善努力が進み、生活保護制度の運用も大きく変化しています。全国のモデルケースになる取り組みになっています。今日は、その一端で、生活保護のしおりの一部を議長の許可を得てお配りしました。本市のものと比べてもらえば一目瞭然です。HPも生活保護のページ、小田原市は「生活にお困りの方はご相談ください」から始まります。今、格差と貧困が広がる中、問題になっている生活保護制度の捕捉率の低さもこういった努力から改善されていくのではないでしょうか。生活保護のしおりをはじめ、生活保護の案内、各種市税の減免や助成制度の案内は詳しくかつ分かりやすく、相談しやすく工夫をする努力をしてもらいたいと思いますが、どうでしょうか。市長の考えをうかがいます。

【市長】①生活保護法は、憲法第25条の理念に基づき、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、健康で文化的な生活水準の維持を図るとともに、世帯の生活保護からの自立を助長することを目的としている。

 この度の基準の見直しは、社会保障審議会の生活保護基準部会が、国民の消費動向、特に低所得者の生活実態を勘案しながら検証された結果を踏まえ、国の責任の下に設定されたものであり、妥当性の高いものであると考えている。したがって、基準の見直しに関する国連からの警告と見直し要請については、国が国連に対して適正に対応されるべきものと考えている。

②低所得世帯の実態については、地域包括支援センター、収税課、消費生活相談室など庁内関係課はもとより、民生委員や医療機関、介護施設などの連携体制の中で、把握に努めている。

 生活困窮者に対する施策については、生活困窮者自立支援事業を平成27年度から実施しており、平成29年度からは境港市社会福祉協議会に委託し、相談支援員を配置して対応している。生活困窮者自立支援事業は、生活に困窮している方に対して、就労や生活習慣改善などの支援を行う事業であり、平成27年度から現在まで49件の支援を実施している。今後も生活保護制度と合わせて、生活困窮者自立支援事業の活用により、生活困窮者への支援を行っていく。

③下水道使用料については、応分の負担、公平性の観点から、生活困窮者の経済状況等を理由とした減免制度の検討は考えていない。納付が困難な方には、個別に相談を受けたり、財産調査等を行って、分納や支払いができる状況になるまで猶予するなどの対応を行っている。また、支払い能力の回復が見込めない案件は、税と同様、滞納処分の執行停止を行い、不能欠損で処理している。水道料金については、米子市水道局から、減免制度を検討する予定はないと聞いている。

④生活に困っている等の理由により、生活保護の相談に来られた際には、お困りの事情をケースワーカー等が聞き取り、申請にあたって必要となる情報を絞り込んだ「生活保護のしおり」を使って、丁寧に説明しながら相談を受けている。また、市税等の減免制度については、市報及びホームページでの周知に加え、窓口での手続きや納付相談の際に減免制度の案内を行っている。

 各種支援制度については、他市の周知方法も参考にしながら、見やすさ、分かりやすさに工夫を凝らすとともに、生活困窮者に接する機会の多い、民生委員やケアマネージャーなどに制度の周知を図ることで、経済的な支援を必要とされる方に、必要な情報が分かりやすく伝わるよう努めていきたいと考えている。

 

(追及質問)

【安田】今でさえ、生活保護受給者の方が、家電が壊れたらそれを買い替えることもできない、食費も切り詰めて、人付き合いも制限しながら生活しているという中での、生活保護基準の引き下げということについては、国連から見直しの要請があるのも当然のこと。低所得世帯の方々の水準をそのままにしていいのかという問題もあると思う。日本政府の対応が適切だと言われたことについては、非常に残念です。

続いて質問するのは、一般低所得世帯の方々について詳しく見ていきたい。

まず、65歳以上の高齢者について。介護保険料の階層が10段階あるが、その一番低い第一段階が、65歳以上人口1万800人程度の中で、1500人を占めている。所得にすれば一番低いところですので、単身であれば当然生活保護の基準以下になる。もちろん、遺族年金や障害年金や家族との同居の実態は、保険料の請求からは明らかにならないので、実態は把握に努めないといけない。それに比べて、生活保護受給世帯のうち、高齢者世帯は185世帯となっている。この数字に開きがあることが心配だが、高齢者の単身世帯や高齢者世帯、例えば国民年金だけの世帯ではほとんどが生活保護受給になっているのではないかと思うが、実態を把握しているのか、必要であれば生活保護につなげているのか、実態はどうか。

【福祉保健部長】生活保護については、申請を原則とした制度。捕捉率100%というのは法に抵触しない限りは無理なことだと考えている。日々の活動の中で、例えばケースワーカー、ケアマネ、民生委員などから、いろいろな情報を得て、生活保護など生活の相談につなげていっている。もし、そういうような方がおられたら是非ご紹介いただき丁寧な相談に乗っていきたい。

【安田】さまざまな関係機関と連携をとり、必要な制度につなげていくということは、徹底してもらいたい。低所得ということになれば、いつも、市税の滞納のことも聞くのですが、国民健康保険4500加入世帯のうち、滞納が半年以上になっている方が、資格証、短期保険証の交付対象になっている。合計240世帯と聞いている。払えるのに払えないと見なされて差し押さえがされた件数が、昨年度107件、滞納世帯の数は変動があると思うが、少なくとも100世帯以上が経済的な問題で滞納に至っているということだ。国保に加入しているので、生活保護は利用していない。こういった方を、生活保護の生活相談や自立支援事業の方につないでおられると思います。以前、消費生活相談室などにつないでいるということも聞いたが、どういった状況になっているか。

【市民生活部長】年間で、消費生活相談室や福祉課につなげるケースは数件。過払い金などについて弁護士の相談につなげたケースも2件ある。窓口で、納税や国保の更新の時に、実情をよく聞いて、専門のところに回した方がいいと判断したときは、紹介している。

【安田】滞納の納付相談は、生活状況を聞きながらすることだと思うが、実態を聞いて相談につなげるケースが数件というのが、そう多くはないということであれば、心がけて、この人にはどういう支援が必要なのかという観点で収納の担当にも仕事をしてもらいたい。

そもそも国保加入4,500世帯のうち、7割軽減は所得33万、給与収入だと98万円という試算があるが、その7割軽減を受けているのが、1,596世帯。かなりの数です。そもそも、生活保護の捕捉率が低い状態の中で、大変な思いをしている世帯が多いのではないかと推測する。

米子市水道局から滞納のデータを得た。実際停水にいたるのが38件あるが、半年以上未納が続くところが56件。様々な手立てをしたうえでの停水であり、生活実態を把握しながらやっている、大事な水にかかわる仕事なので、水道局も丁寧にやっていると思うが、やはり、滞納の件数としては少ない。もちろん、水を止められたら命にかかわることだから、努力して払っておられるということだ。減免を実施している自治体では、低所得だけでなく、障害の方も対象にしているが、「公共の福祉の増進に寄与することを目的として実施している」というふうになっている。また、下水道料金の滞納もやはりそれほど多くない。差し押さえされている割合はやはり少なく、経済的理由により滞納になっていると思う。すぐには難しいかもしれないが、福祉減免をやっている自治体を研究して検討してもらいたいが、どうか。

【建設部長】下水道は停止することができないので、いろいろな方がおられて粘り強く調査したり相談に乗ったりしながら、できるものから徴収したい。下水道は年間約100件の滞納があり、100件を徴収猶予している状態であり、理解いただきたい。

【安田】滞納が続いて猶予されているより、自分の権利として減免が受けられるということは、かなり違うと思うので、重ねて検討をお願いする。

生活保護の捕捉率についてですが、今、生活保護世帯は300世帯弱で推移している。資産を考慮すると3割程度の捕捉率という試算もあり、2010年の厚生労働省の推計も3割程度とういことだ。研究所によっていろんな数字があるが、3割と考えると、生活保護が必要なのに受けられていない世帯が700くらいはあると考えられる。「申請主義だからそれでいい」とは言ってほしくない。

 

生活保護の捕捉率を下げる要因になってはいけないなと思って、「しおり」を配った。小田原市のものを見てもらうと、全体的に「相談をしてください」というふうになっている。資産や能力の活用が申請の前提条件ではなく、「そこがなかなかできないなら、相談してください」「必要であれば申請してください」となっている。一方、境港市のものは、能力や資産を活用しないと申請できないかのような、そのように説明はされないが、持ち帰ってもう一度考えるときに、「さまざまな努力をしても生活を維持できないときに限って初めて適用されるものです」とあると、努力できるかできないかを自分で評価しないといけないということになってしまう。こういう、誤解を与えるような表現をなるべくしないということも、小田原市の検討の中ではされている。ホームページについても、県内他市に比べても、情報も少なく残念に思っている。この機会にしっかり検討して、見直すべきところは見直してほしい。